研究概要 |
【目的】筋萎縮性側索硬化症(ALS)等の神経難病は,QOLを高める療養のあり方により,意義のある生活を全うできるが,安楽死の要因として療養体制,緩和ケアの不備がある。そこで,安楽死の選択分岐の要素を明らかにする。 【方法】医師の自殺幇助が唯一合法化されている,米国オレゴン州政府当局を訪ね,自殺幇助についてインタビューならびに当局資料の分析を行った。また,技術系学生(N=78)と医療福祉系学生(N=128)に,(1)オランダにおけるALS患者の安楽死,(2)オレゴン州におけるALS患者の自殺幇助,(3)わが国ALS患者3人の闘病の記録を,ビデオで見た後に,ALS終末期の療養のあり方について自計調査を2度行った。 【結果と考察】自分自身のALS終末期療養のあり方について,「積極的闘病」25.7%,「緩和ケア」16.0%。「自殺幇助」9.2%,「積極的安楽死」42.7%,「その他」6.3%,「愛する人」については,「積極的闘病」27.7%,「緩和ケア」13.0%,「自殺幇助」6.8%,「積極的安楽死」33.5%,「その他」18.9%であり,「自分自身」「愛する人」とも,「積極的安楽死」の希望は,技術系<医療福祉系(p<0.01),男<女(p<0.01),「積極的闘病」の意思は,技術系>医療福祉系(p<0.01),男>女(p<0.01)であった。また,「積極的安楽死」について,「自分」>「愛する人」(p<0.001)であり,「愛する人」の療養のあり方2回目回答を目的変数とした重回帰分析では(r=0.50,p=0.0015),特に有意な項目は「自分自身」の2回目の選択(r=0.35,p=0.005)であった。ALSついて医学的知識を有するほうが,法律で禁止されている「積極的安楽死」に肯定的であることが示唆された。「愛する人」の療養について,自分自身の場合と一致させて考える傾向がみられた。教育において神経難病の「緩和ケア」や「積極的闘病の意義」について,繰り返し教育することが,ペシミズムを回避することにつながると考えられた。
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