研究概要 |
糖尿病に対する地域健康サービスの総合的かつ継続的なあり方を検討するために、疾病管理による評価を実施した。糖尿病について、地域における1次予防から3次予防までを視野に入れて、効果と費用を総合的に評価した。その結果、つぎの結論が得られた。 1)わが国における疾病管理では、学校から地域、職域におよぶネットワーク・システムの確立が重要な役割を果たすことを明らかにした。 2)糖尿病の社会的負担の評価した結果、直接費用は,診療費が9700億円,患者の自己支払が3100億円であった。間接費用は,労働損失が2兆7千億円,早期死亡が1700億円であった。これらを総計すると疾病費用は4兆1千億円となった。 3)糖尿病の健康サービス戦略の効果を系統的に評価した結果、3次予防にのみ明確な根拠が確立していた(強化療法,腎症・網膜症スクリーニング)。また、スクリーニングは、早期発見ではなく、症例発見を中心とすべきことが明らかとなった。 4)地域における糖尿病戦略は、ほとんどが2次予防(健診)に偏っており,疾病経営管理の観点から、3次予防を中心とした地域プログラムの開発が提案された。 5)糖尿病の健康サービスの効果と費用を評価した結果はつぎの通りであった。1.3次予防の強化療法は、強化インスリンおよびSU剤は通常療法に比べて、生存年とQALYが延長し、費用が減少することが認められた。2.地域における糖尿病(2型)スクリーニング(症例発見)の費用-効果、よび費用-効用は、実施の中等度の根拠を示すものであった。3.微量アルブミン腎症スクリーニングは、ACE阻害薬による早期治療により、透析導入率が半減し、QALYの延長が認められた。4.網膜症スクリーニングでも、QALYの延長が認められた。これらは、いずれも早期スクリーニングによる合併症予防が効果的であることを示している。
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