研究概要 |
MRSA用抗生物質であるバンコマイシン、アルベカシン、テイコプラニンの血中濃度をコンピューターで速度論的解析を行い、医療経済学的にも臨床的にも最適の投与計画立案について検討した。バンコマイシンについては、エビデンスとして得られている日本人の平均的な速度論的パラメータでコンピューターシュミレーションした結果、体重52kgの患者では1日1回1300mgを間欠点滴投与することで、ピークもトラフも理想的な血中濃度を達成することが実証された。添付文書記載内容どおり、1日2000mgを2週間投与した場合、その経費は【symmetry】0,200かかるのに対して、本投与法では【planck's constant】2,650で、済み、コストを≪,550も削減することが明らかとなった。また、添付文書にある老人薬用量である、1日1000mgを2回分割する投与では、血中濃度のピーク濃度がその有効濃度である25〜40ug/mLに達せず、MRSAを陰性化し得ないことが判明した。データを解析した関連病院における臨床所見においてもこの投与方法で陰性化した例はなく、極めて非効果的かつ非効経済的投与方法であることが示唆された。一方、アルベカシンについても、1日200mgを2分割する添付文書の投与法では、血中濃度のピーク濃度がMRSAを陰性化するのに不十分で、1日200mgを1回投与すると、格段に効果的であることが明らかになった。テイコプラニンについては、申請者で小集団における平均的な薬物速度論的パラメータを算出した結果、分布容積は0.6436L/kg,クリアランスは0.0018L/kg/hrであることがわかり、このパラメータを用いてコンピューターによる最適投与計画を算出した結果、添付文書にある1日200mg間欠点滴投与では不適当で、添付文書のもう一つの投与方法である、1日400mg投与が有効であることを明らかにした。 本研究成果は、限られた医療資源を有効に使用するというこれからの医療に極めて示唆的な端緒を示した点で意義深い。
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