研究概要 |
本研究では、日本人における連鎖情報に基づいた精神分裂病の疾患脆弱性遺伝子の同定を目指した。連鎖解析は多くの家系サンプルを必要とするので、他の施設との共同研究として本研究を行った。共同研究のひとつは日本人精神分裂病の罹患同胞対法による連鎖解析を目指している多施設共同研究グループのJSSLG(Japanese Schizophrenia Sib-pair Linkage Group)であり、もうひとつは、精神分裂病のtrait markerである探索眼球運動スコアを用いたQTL解析を行っている日大,東京医科歯科大との共同研究である。 罹患同胞対法はJSSLGで集められた家系サンプル142家系、367人を対象とした。5,10,15番染色体の23,20,12ヶ所のマイクロサテライトマーカーの遺伝子型決定を行った。マイクロサテライトはWeber ver9のを使用し,連鎖の可能性が示唆された5q32-33はさらに19マーカーを追加して、検討した。 探索眼球運動のQTL解析は、38家系、122人を対象とした。全染色体の365マイクロサテライトマーカーの遺伝子型を決定した。 その結果、探索眼球運動のQTL解析では6p,17q,22qにおいて連鎖が示唆されるロッド値を得た。一方、JSSLGでは統計的に有意な連鎖領域は検出されなかった。しかし、多重比較による補正をしない場合は、5qにおいてp<0.05の連鎖領域が見られ、その領域におけるマイクロサテライトマーカーで精神分裂病との連鎖不平衡がみられ,この領域に弱い精神分裂病感受性遺伝子があることが示唆された。現在この領域の遺伝子やESTの解析を行っている。探索眼球運動のQTL解析では22番染色体において連鎖が確認された。 これらの研究により,日本人の精神分裂病においても,発症脆弱性に多くの遺伝子が関与していることが示唆された。
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