研究概要 |
研究目的:薬物治療に関わる代謝酵素のphenotypingとgenotypingによって日本人における各酵素の遺伝子変異頻度を明らかにする。研究内容:内部倫理委員会の承認を得て、初年度は、29人の健常ボランテイアを対象として、caffeineとphenytoinによるcocktail phenotyping testの有用性について検討した。その結果から次年度は182人を対象にcaffeine 150mg内服後の尿中代謝物を定量して治療薬代謝に関わるcytochrome P450(CYP)1A2,CYP2A6,N-acetyltransfe rase(NAT2),xanthine oxidase(XO),flavin monooxygenase(FMO)の活性(MR)を解析した。 研究成果:1)cocktail studyについては、caffeineによる代謝活性の測定誤差・再現性は良好であったが、phenytoinによる代謝活性測定は不可能であった。2)CYP1A2のMRには明らかな2相性は無かったが、喫煙による誘導(1.56倍,p<0.0001)と性差(男/女=1.33,p<0.01)を認めた。3)NAT2のMRは3相性に分布した。slow acetyl ator(SA)の頻度は11%であり、性差(男/女=0.90,p<0.011)を認めた。4)XOのMRにも性差(男/女=1.14,p<0.001)がみられた。5)FMOでは集団のMRから離れて低値を示す者2名と高値の者5名を確認した。5)CYP2A6のMRをKrulらの式で算出すると不明確な2相性を呈し、喫煙による影響(喫煙/非喫煙=0.73,p<0.0002)を認めた。今後の展望:現在、以上についての論文作成と、70例の遺伝子解析を行っており、今後も「最大効果・最小のリスクの薬物療法」を目指した研究を展開する予定である。
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