研究概要 |
1996年,NawrozらとChenらはに頭頚部癌と肺小細胞癌患者血清からゲノムDNAを単離し,癌化に伴うミクロサテライトDNAの変化を報告した.これは,ゲノムDNAが癌細胞や細胞死に由来いする可能性のほか血流中で安定に依存する可能性を示唆した.血清で遺伝子検査が可能であれば,疾患の病態解明に広く臨床応用が可能となる.しかし,彼らの報告にはコントロールがなく,健常者にもゲノムDNAが存在する可能性は未解決であった.我々は健常者血液中の遊離ゲノムDNAの存在につき,変性ゲルシステムにより基礎的検討を行った.【対象・方法】健常者および患者血液から血清(血漿)や血球を分離した.ゲノムDNAはQlggenのQIAamp DNA Blood Kitを用いて単離し、そのゲノムDNAを鋳型として,ミクロサテライトおよびp53遺伝子断片の遺伝子増幅を行った.ミクロサテライト・マーカーはAR(X染色体の繰り返し配列(CAG)19(CAA)),SAT(6番染色体のCAGリピート),UT762(21番染色体のAAAGリピート)を用いた.PCR産物の解析は,非変性ゲル電気泳動後に銀染色を行い,PE Bio-Systemのキャピラリー電気泳動装置310Gene Scan(変性ポリマーPOP4)において蛍光標識PCR産物をサイズマーカーに対し見積もった.【結果】血清400μlからは肺小細胞癌で184±36ngのDNAが回収され,全てのサンプルでミクロサテライトDNAあるいはp53遺伝子断片が増幅できた.保存血清(6℃1ヵ月,-30℃3年)でも同様の結果が得られた.肺小細胞癌患者のでは,一部に多型の消失や電気泳動移動殿違いが認められた.【まとめ】健常者の血清中にも遊離ゲノムDNAが存在した.血清がミクロサテライトのわずかな変化の解析に耐えうる試料かどうかについては,更なる研究が必要と考えられる.
|