1.研究目的 (1)新腫瘍親和性物質(5-aminolevurinic acid:5-ALA)はヘムの前駆体であり、腫瘍組織に親和性を有し、体内代謝を受けて蛍光性のProtoporphyrin-IX(Pp-IX)になる。その蛍光が、肉眼的に腫瘍の境界病変部位が容易に観測される事実を我々は報告してきたが、その集積部位組織内のPp-IX蛍光の分光分析により、腫瘍集積率を外挿する。 (2)腫瘍組織に生成・集積したPp-IXの蛍光スペクトル解析により、内視鏡に導入する効率の良い励起光源の波長と蛍光観測側のフィルターの波長域を明らかにする。 2.研究方法および結果 (1)皮膚癌(扁平上皮癌)の継代移植した腫瘍マウスモデルを使用して、経皮的投与後の腫瘍組織切片の蛍光分析を行った結果、経皮的投与方法に超音波照射を併用することにより、腫瘍実質に約2倍のPp-IX集積濃度の増大が観測できた。 (2)摘出腫瘍組織内のPp-IX蛍光励起スペクトルから、蛍光内視鏡に導入する効率の良い励起波長は、Pp-IXのポルフィリン環由来のSoretバンドピーク波長でもある405nm、すなわち本レーザー発振波長が最適と思われた。したがって、蛍光観測側のフィルターは、励起光である405nmを除く600nm以上の波長域が最適と考えられる。しかし、今後、術中にて切除後の治療照射の波長は、570nm以上の長波長用ランプによる術後照射法が有用と思われた。 (3)臨床応用として、実際の脳腫瘍患者に新腫瘍親和性物質5-ALAを経口投与し、切除した脳腫瘍組織の凍結切片の蛍光分析の結果、蛍光性体内代謝生成物質Pp-IXが正常組織に比して約3〜4倍集積していることが判明した。術中に脳腫瘍境界病変部位の肉眼的蛍光鑑別を試みたところ、切除部位の決定に有用と考えられた。
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