研究概要 |
血小板膜糖タンパクglycoprotein(GP)Ibとvon Willebrand factor(vWF)との結合は止血機構における最も初期の反応として重要である.そのため,GPIb-vWFの結合を介した血小板活性化機構を解明することは,出血傾向や血栓性疾患の治療・予防に大きく貢献することができる。 本研究では種々のGPIb結合性蛇毒タンパク(botrocetin,alboaggregin-B,echicetin,Jararaca GPIb-BP,flavocetin-A)を用いてGPIbを介した細胞内信号伝達系について解析を行った.Alboaggregin-B,flavocetin-AはGPIb-Srcの結合,64kDa蛋白のチロシンリン酸化,血小板凝集を惹起した.botrocetinはvWF存在下で,これらの反応に加えSrc,Lyn,14-3-3の細胞骨格への移行,Ca^<2+> influxも引き起こした.Echicetin,Jararaca GPIb-BPはいずれの反応も起こさなかった.これらの結果からGPIbを介した血小板凝集にはGPIbへのSrcの結合が重要であり,64kDaタンパクのチロシンリン酸化がみられることからもチロシンキナーゼの関与が示唆された.Botrocetinにおけるチロシンキナーゼなどの細胞骨格への移行,Ca^<2+> influxはモノマーのvWFを用いると消失することから,vWFによるGPIbのクラスタリングが重要であると考えられた. 血小板からmRNAを抽出してcDNAライブラリーを作成し,two-hybrid systemを利用してGPIb結合タンパクの同定を試みたが,既にGPIbに結合することが報告されている分子しかとらえることができなかった.
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