研究概要 |
C-reactive protein(CRP),serum amyloid A protein(SAA),procalcitonin(PCT)の3つの炎症マーカーについて臨床的および基礎的検討を行った。 1.臨床的検討:最もポピュラーな炎症マーカーであるCRPとの比較検討。 (1)CRP高値症例では,SAAも高値を呈し,両マーカー間に有意差は認められなかったが,PCT濃度は重症細菌感染症(敗血症および重症肺炎)でのみ有意な上昇を呈し,重症細菌感染症と他の疾患との鑑別が可能であった。 (2)CRP低値症例においては,PCT濃度は基準範囲内であったが,SAA濃度はウイルス感染症およびステロイド治療を行っている自己免疫疾患症例においては高濃度を呈した。 (3)髄液SAAの異常高値より髄膜炎の有無を判断することは可能であり,著名な増加は細菌性髄膜炎にみられ,この場合にはウイルス性髄膜炎との鑑別が可能であった。 各炎症マーカーは個々の特徴に合わせて用いることで,より有効な指標になることが示唆された。 2.基礎的検討:臓器移植の拒絶反応のモニタリングに用いられる炎症マーカーと各種免疫抑制剤の影響ついて,肝細胞培養系HepG2細胞を用いて検討。 (1)髄液,培養液中のSAA,PCT濃度測定のために検討した測定法は,臨床検査法として適していた。 (2)ステロイドにより単球のIL-6産生が抑制され,その結果肝細胞によるCRP産生は低下傾向を示したが,SAA産生はステロイドの肝細胞への直接作用により逆に増加した。非ステロイド免疫抑制剤では単球のIL-1bの産生が促進され,肝細胞のSAA産生は増加傾向を示したが,CRPは殆ど影響を受けなかった。 単球・肝細胞培養系において各種免疫抑制剤の添加によりサイトカイン,ならびにCRPおよびSAA産生に相違のあることを明らかにした。 なお,PCTに関しては体外診断用医薬品として製造(輸入)承認申請のための研究会が発足し,2000年8月より活動を始めたため,8月以降の検討結果の個人的な報告はできません。
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