研究概要 |
酸性電解水の抗微生物効果は、幅広いスペクトルを示し、即効的であることが判明している。しかし有機物の存在でその効果は消失する。院内感染対策、食中毒対策を含めた新興・再興感染症対策として酸性電解水が活用されるために、各種酸性電解水生成器からの生成水の物性値を測定し、腸管出血性大腸菌O157:H7(以下O157)などに対する殺菌効果を検討し、適切な手洗い方法などの検討を行った。薬事法認可(医療用具認可)装置5機種の物性値は、有効塩素濃度20〜60mg/L,pH2.2〜2.7,ORP1100〜1400mVであった。 適切かつ有効な手洗い方法を検討した。強酸性電解水の流水による手洗いについては、薬事法認可では2分間の洗浄とされているが、適切な方法を行うことにより、15秒間の洗浄で有効であった。すなわち、強酸性電解水は15秒の手洗いで菌数減少が認められ、日常業務中の菌数が少なく、手荒れも少なかった。ウエルパスによるラビング法の場合は、一般細菌に対しては優れた殺菌効果を示したが、Bacillus属が残存し、手荒れ,刺激性,乾燥感の頻度が他法に比べ高かった。石鹸流水による30秒間手洗いは、手荒れはなく、除菌効果もあるが、平均残存菌量が多かった。 以上の結果から、強酸性電解水による有効な手指洗浄法は、 (1)手が汚れている場合は、石鹸を用いて水道水で洗い流す。 (2)流水下または専用の手洗い器で手全面に強酸性電解水がかかるように洗う。指先、爪下を特に注意して洗う。1分以上が望ましいが、適切な方法で行えば10〜15秒でも十分な効果が得られる。 (3)残留効果を期待する場合には、ウエルパス^R、イソジンパーム^Rなどを使用または併用する。 酸性電解水は、抗微生物効果を有する洗浄剤として理解し、その使い方は浸漬するのではなく洗い流すまたは数回新しい酸性電解水に取り替えることがキーポイントである。
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