研究概要 |
1型糖尿病の発症予知を目的としたマススクリーニング法の開発に関する研究を行い,下記の成績を得た. 1 1型糖尿病発症の環境因子とされる牛乳タンパク質抗原に対するIgA抗体の超高感度酵素免疫測定法(免疫複合体転移酵素免疫測定法)を開発した. 2 1の方法で発症直後の1型糖尿病患者血中のIgA抗体価を測定したが,健康人との差は見られなかった. 3 両者に差が見られなかったのは,抗イディオタイプ抗体が測定を妨害していたためであることを明かとした. 4 抗イディオタイプ抗体の妨害が軽減できる測定法を開発し,これを用いて再測定した結果,患者では,牛乳タンパク質抗原のみならず,食物抗原一般にIgA抗体応答が亢進していることがが示された. 5 DQB1^*0401-DRB1^*0405を持つ症例では,血中の抗ウシ血清アルブミンIgA,抗ウシβ-ラクトグロブリンIgA,IgAおよびTGF-βレベルが他の症例に比べ有意に高かった.このことから,このハプロタイプを持つ症例では,消化管でTh3に対する抗原提示がより強く起こり,それに伴ってTGF-βの産生が亢進し,その結果,IgA抗体価が上昇すると考えられた.この結果から,食物抗原に対する粘膜免応答の亢進を指標とする発症予知法の病因論的妥当性が示された. 6 Dried urineを用いた尿中の食物抗原に対するIgA抗体価を測定するマススクリーニング法の実用化のため,保存安定性(3ヵ月),日差再現性,同時再現性などの測定精度を評価し,良好な結果を得た. 7 血清中およびdriedurine中の食物抗原に対するIgA抗体価には良好な相関関係が見られ,マススクリーニング法の妥当性が示された.
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