研究概要 |
[目的]女性とエイズ,妊娠時HIV抗体検査に関する女性の知識や意識の実態を縦断的,横断的,多面的に把握し,それをもとに感染予防とケア,支援に関する看護戦略を提言する.[対象]医療の受け手側の女性と提供側の産科領域看護職者:母親440,女子学生441,看護職188,助産師5.[方法](1)無記各自記式質問紙法,(2)ケーススタディ.[内容](1)-対象共通:HIVの知識と意識,母親・学生:検査の認識,HIV感染女性の妊娠の是非,看護職:検査への関心度,血液体液曝露実態.(2)-HIV感染女性への助産師の関わり.これらの結果をもとにリプロダグティブヘルス領域の看護職向け教育プログラム作成.[結果]96年調査との比較では母親の知識の周知率は上昇したが一般学生と看護学生では低下し,表層的普及の一方で教育現場や社会的関心の低下を示唆した.女性関連の知識は多項目に比べて依然として低率であった.HIVおよび医療に対する意識と知識得点との明らかな関連性は認められなかった.母親は感染リスクに対して特定集団への固定観念をもち,感染母子の隔離等の賛同率が高く(母親63%,学生34%,看護職33.6%),96年調査の対象よりも有意に高率であった.HIV抗体検査の受検者265名中「説明あり」の回答率は約40%に過ぎず,「記憶なし」は35%,「受検不明」は20%を占めた.産科業務の血液体液曝露に対する予防行動は,研修の有無による差を認めた。しかし,新生児ケアの曝露リスクに対する手袋着用率は低く,母乳取り扱いでは10%以下であった。周産期の感染妊婦支援は短期的関わりになかで展開され,ジェンダー視点をもった助産師の関わりとチーム連携の重要性を示した.[まとめ]リプロダクティブヘルス領域における女性のHIV感染予防,ケア,支援の看護戦略は,これらの結果を踏まえて開発する必要性があると考えられた.
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