研究概要 |
平成14年度は、過去3年間の研究経過の中で得られたデータをもとに、量的分析及び質的検討を行い、育児肯定感尺度を用いて得られる母親の実態を明らかにすると共に、尺度の妥当性を検討することを行った。更に、この4年間の研究成果を冊子として報告書にまとめた。 1,母親の産褥1ヶ月から2ヶ月にかけての育児生活肯定感の変化について 本研究で作成改訂した4カテゴリー19項目の育児肯定感尺度を用いて、出産後に育児を開始した母親228名の産後1ヶ月及び、2ヶ月の回答結果を分析した。経産婦及び初産婦共に、1ヶ月より2ヶ月の方が、肯定的感情が上昇する傾向が見られ、母親の多くは時間の経過と共に、次第に親としての自信や自己肯定感を強めて、生活に適応してゆくことが明らかになった。しかし、夫に対する認識は、むしろ低下する傾向が見られた。しかし、このことは母親の肯定的感情に対して、負の要因としては、特に影響していないと考えられた。 2,育児肯定感高得点者の分析 育児生活肯定感尺度が、実際の現象に一致して機能するスケールであるかどうかを検討する目的で、産後1ヶ月時点の測定値に高得点を示し、その後6ヶ月にわたって高得点を維持した母親4名に面接調査を行い、出産後からの育児生活の実態を把握した。その結果、4例全ての母親が自分の子どもの特徴や発達の変化を詳細に観察し、子どもの成長を楽しみに思っていること、育児を負担に考えず、自分の生活をコントロールしつつ、周囲のサポートを上手に活用していること、夫や実家の手伝いが必要なときにいつでもサポートが得られる状況にあることが明らかになった。即ち、今回の結果及び、前回検討を行った低得点者の結果と共に、この測定尺度が低得点者・高得点者の実態を良く反映していることが明らかになった。 3,冊子報告書の作成 本研究では、4年間の経過の中で8演題の学会発表と、1題の原著論文を作成した。今後は、未発表分のデータの分析及び、既に発表した成果についての原著論文の作成を行ってゆく予定である。
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