研究分担者 |
辰巳 恵子 (辰巳 惠子) 藍野学院短期大学, 看護学科, 助教授 (20188270)
横田 芳武 藍野学院短期大学, 看護学科, 教授 (80079730)
金井 一薫 日本社会事業大学, 教授 (10215402)
足利 学 藍野学院短期大学, 看護学科, 助教授 (00331752)
堺 俊明 藍野学院短期大学, 学長 (20084874)
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研究概要 |
在宅で暮らす痴呆高齢者の調理活動の効果をKOMIチャート・HDS-R及び自作の認知機能と行動の評価スケールを用いて評価した。また,調理活動に関わるスタッフ・家族の意識の変化と学びについて調査・分析を行った。 大阪府下のデイサービスを利用する痴呆高齢者20名を抽出し,実施群10名,非実施群10名の2組に分けた。実施群10名の平均年齢は77.8±3.6歳,男性3名,女性7名,脳血管型痴呆7名,アルツハイマー型痴呆3名である。週1回,1.5時間,合計10回の調理活動を実施した。実施群の調理活動前後の検定結果から,以下の結果が得られた。 1.HDS-Rによる評価では効果が認められなかった。 2.KOMIチャートの認識面では「会話・性」の2項目に,行動面では「眠る・性・役割」の3項目に効果が認められた。 3.行動観察の評価では「表情・満足度」の2項目に効果が認められた。 4.認知機能評価では「エピソード記憶・手続き記憶・判断能力」の3項目は実施の早期から効果がみられたが,「記憶の定着」には効果がみられなかった。 5.スタッフ・家族の認識は「包丁が使えるかが心配」や「参加者同志の関心は薄い」の項目が肯定的に変化した。 6.調理活動はアルツハイマー型痴呆では,調理材料を見る,切る,触れるなどの体験によって非陳述記憶が想起され,行動面の変化に効果がみられた。一方,脳血管型痴呆では,他者との交流によって,陳述記憶が刺激され,満足度などの認識面の変化に効果が認められた。 以上の結果から,デイサービスにおける調理活動は痴呆高齢者の手続き記憶を刺激して利用者の異性との自然な交流によって安定した男女の関係性の維持と活性化に役立つ。 調理活動は周囲の人々と交わる楽しさや,その人らしさを引き出し,生活の質(QOL)を回復させる効果がある。従って,調理活動によって潜在的な残存機能および健康な力を発見することができる。
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