研究概要 |
本研究は、女性の1型糖尿病患者における摂食障害に類似した食行動異常について調査したものである。1999年度には、「食事・運動・薬物療法の日常生活における困難さ」についての質問紙作成と第1回目調査をおこなった。A.A.IrvinによるEBAS(Environmental Barriers to Adherence Scale)に基づく質問紙を作成に際しては原著者に承諾を得た上で日本語による質問項目を作成し(食事18項目、運動16項目、経口薬13項目、インスリン療法13項目、血糖測定13項目、5段階評定尺度)、糖尿病患者を対象に調査を実施し、質問項目の検討をおこなった(クロンバッハα係数0.73-0.83)。 2000年度には、EBAS質問紙の修正を行うとともに、糖尿病治療を担当している医師を対象に(配布数550)、摂食障害に類似した食行動異常を呈する1型糖尿病事例の治療の経験、および治療を経験した事例の概要について質問紙調査を行った(回収数254、報告事例数97)。 2001年度には、修正版のEBAS質問紙(食事21項目、運動17項目、インスリン療法16項目、5段階評定尺度)にて糖尿病患者を対象にアドヒアランスの障碍について調査を行い(クロンバッハα係数0.77-0.80)、また糖尿病治療を行っている医師を対象に2000年度に引き続き調査を行うとともに(第2回目調査、配布数500、回収数246、報告事例数45)、500床以上の病院において糖尿病治療に携わっている栄養士および看護職者を対象に、摂食障害に類似した食行動異常を呈する1型糖尿病事例の栄養指導および看護の経験および栄養指導・看護事例の概要について質問紙調査を行った(栄養士回収数143、報告事例数22、看護職者回収数:外来120・入院140、報告事例数:外来52・入院65)。医師からは,本人からの訴えがないため診断が遅れること,またカウンセリングを依頼する適切な部門や人材の不足などの意見があり,栄養士らは,栄養指導が逆に拒食などの食行動異常を引き起こす可能性があること,栄養指導では十分な対応ができない難しさ,看護職者は,精神面のケアの必要性を痛感するが技術が伴わない等の意見があった。 さらに、2001年度は摂食障害に類似した食行動異常の経験のある1型糖尿病女性、および1型糖尿病の治療を続けながら医療に携わっている女性にインタビュー調査をおこない、これらの調査結果を踏まえ、糖尿病とともにある生活における食事療法の意味について考察を深めた。
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