研究概要 |
思春期日本人の体型・体組成の発育とからだの成熟度の関係を観察し,ついて,体型の発育が体力・運動能力の発達とどのように関連しているのかを縦断的に分析した。被験者はつくば市内の一公立中学校生徒(女子253名,男子262名)である。体型は,Heath-Caterの人体測定法によった。体脂肪計を用いて体脂肪率を計測した。身長成長曲線は被験者の小学校6年間のデータをBTT法で分析し,身長最小/最大速度年齢,成人身長のパラメータを求めた。体力・運動能力は文部科学省のスポーツテストに基づいた。 ソマトタイプの平均値は女子では4.4-3.7-2.9.男子では3.6-4.9-3.1であった。ソマトタイプは女子では内胚葉要素を保ちながら中胚葉要素を加味するように発育し,男子では中胚葉要素が顕著になって行く一方で外胚葉要素も加わるように発育する。身長成熟度,予測成人身長はこれらの体型と関係がなかった。しかし,内胚葉型の女子の最小速度年齢は外胚葉型の子どもよりも1年早い年齢で開始し,そして,ピークに達する年齢も同様である。これらの年齢パラメータと体脂肪率の間にも負の有意な相関関係があった。すなわち,内胚葉型の女子は身体の成熟の早熟傾向が明らかになった。男子にはこのような体型,身体組成による身長成熟の違いがなかった。 体組成・体型の成長率と体力・運動能力の比成長率を正準相関分析法で総合的に分析したところ,内胚葉要素が強くなることと,あるいは体脂肪率が高くなることと全身持久力が落ちていくことの間に関係があることが明らかになった。偏相関分析法による分析では中胚葉要素の発育と筋力,全身パワーとの間に負の相関をみた。これらの原因を,身体活動量の経年変化にからめて考察したが,体型,体力・運動能力の発育発達には有意な影響をもたらすことはなかった。
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