研究概要 |
安定同位体^<13>Cを標識した炭水化物を経口摂取すると,生体内で酸化され,呼気ガス中に^<13>CO_2となって排出される.通常の炭素(^<12>C)は,^<12>CO_2として排出されることから,呼気ガス中の^<13>CO_2と^<12>CO_2の同位体比(^<13>C/^<12>C比)を連続計測すれば,摂取糖質の酸化利用動態がわかる.平成11年度に確立した^<13>C/^<12>C比連続計測法を用いて,平成12〜13年度においては,グルコース(G)およびフルクトース(F)の酸化利用動態とそれら経口摂取が運動時の循環調節に及ぼす影響について検討した.健康な成人10名が,60%VO_<2max>の負荷で,40分間の自転車作業(1回目)を行った後,安定同位体^<13>Cを標識したGとF溶液(GとF条件),あるいはプラシーボ水溶液(W条件)を摂取し,再度,60%VO_<2max>負荷で60分間の自転車作業(2回目)を行った.両条件の2回目の運動時における呼気ガス^<13>CO_2の連続計測から^<13>C/^<12>C比を測定し,そのタイムコースからGとFの酸化利用開動態を明らかにした.また2回目の運動時における動脈血圧,心拍数,筋血流,皮膚血量,および主観的運動強度(RPE)を比較した.その結果,GとFの酸化利用開始点は14〜17分であり,ピーク値は37分と53分に出現することが示された.またG条件では,運動開始期から運動終了にいたるまで,他条件にはない動脈血圧の低下がみられた.またこの血圧低下がGの酸化開始に先行することも示された.さらにG条件では心拍数,筋血流量,RPEが有意な低下を示した.一方,F条件における変数はW条件と相違がなかった.これらの結果から,G条件におけるGの酸化利用開始前の血圧低下には,Gの消化吸収に関わる血管拡張が起因すると考えられた.またその後の持続的血圧抑制には,セントラルコマンドおよび筋代謝受容器反射からの制御が働くと考えられた.
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