研究概要 |
本研究は,3歳〜6歳までの幼児の身体組成を縦断的に測定し,幼児肥満に関する身体組成を幅広い視点から研究するものである.本年度は,4年継続の最終年度にあたったため,我々が1998年から実施している福岡身体組成研究のデータも利用して,以下のような興味ある結果が得られた. 1.わが国には,小児の肥満度を評価するための確立された方法がない.一般には標準体重からの%偏差が用いられている.また,%Fatを基準とする方法もあるが,肥満に関するcut off pointも確立されていない.そこで,BMI-%ileのcut of pointの妥当性をsensitivityとspecificityによって検討した.その結果,男女とも肥満を判別するBMI-%ile法の妥当性は高く,BMI-%ile法により分類された肥満者の平均的な身体組成は%Fat法によって肥満と判別された者と同様の傾向を示した. 2.小児の身体組成研究は,分析法の開発に集中し,そのデータの表現法についてはあまり行われていない.一方,小児の身体組成分析には多くの難点があるため,測定が容易で,測定誤差が小さいBMIが多く用いられる.BMI(kg/m^2)は除脂肪指数(FFMI, FFM/m^2)+脂肪指数(BFMI, BFM/m^2)であるため,これら2つの指数は身長の異なる個体の身体組成を表現する1つの方法である.そこで本研究は,4-10歳の小児1002名を対象に,FFMIとBFMIの各%ile値を求め,日本人幼児のFFMIとBFMIの標準値を決定した.その結果,この年齢範囲のFFMI標準値は男児,女児,BFMI標準値は男児,女児であった. 3.BMIは身長と相関しないという条件で肥満の判別に利用可能である.そこで,本研究はBMI-rebound(5歳時)の前後で,BMIを構成するFFMIやBFMIと身長の相関を検討した.その結果,3〜5歳まではFFMI, BFMIとも身長とは相関しないが,6〜8歳までは両指数とも身長と相関することが明らかとなった.従って,5歳以降少なくとも8歳まで,BMIは肥満判別法として利用できないことが明らかとなった.また,BMI-reboundが必ずしも肥満度の上昇を意味しないことも明らかとなった.
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