研究概要 |
脚の自電車エルゴメーターを用いていくつかの一定負荷運動を行い,発揮パワーと運動継続時間の関係(以下P-t 関係)をみると,直角双曲線[(P-θ_F)・t=W']として記述されることが知られている.この漸近線レベル(θ_F)は「疲労性作業閾値」と呼ばれ,長時間に渡って運動継続可能な上限の強度をあらわし,一定値パラメータ(W')は,θ_Fより上でなすことができる仕事量に相当する.このθ_FとW'は,中長距離走競技能力のパフォーマンスを表す指標として認められ始めているものの,間欠的運動においても同様であるかは不明である.そこで予備実験として,間欠的にθ_F以上の高強度運動を疲労困憊まで行い,θ_Fより上でなした仕事量を算出してみたところ,P-t関係から得られたW'の値より明らかに大きな値を示した.この結果に対して,1)前の運動がウォーミングアップとなって,引き続く運動のθ_F自体を上昇させた.2)W'が休息時に回復した.3)またはその両者の影響を受けたという3つの仮説を立て,今年度は,1)の仮説を検証するために次のような実験を行った. 8名の被験者(19ー39歳の男女)が,それぞれ4種類の異なる強度(160ー330Wの間で4種類)における脚自転車ペダリング運動を疲労困憊に至るまで行い,P-t関係を求め,θ_FとW'を推定した(contorl条件).ウォーミングアップ条件(W-up条件)として無酸素性作業閾値(AT)と最大酸素摂取量の中間の強度(Δ50%)で6分間のペダリング運動,6分間の休息をはさんだ後,上記の4種類の強度におけるペダリング運動を行い,control条件のθ_FおよびW'と比較した.結果としてW-up条件はcontrol条件よりも有意に運動継続時間が延長し(contrlo:182±88,W-up:215±117sec,平均値±標準偏差),W'は有意な変化を示さなかったが,(control:10.9±3.2,W-up:11.0±3.2kJ),θ_Fは有意に高い値を示した(control:169±32,W-up:177±34W,p<0.05).以上の結果から,間欠運動の前運動に相当する,高強度のウオーミングアップ運動は,引き続く運動の疲労性作業閾値を上昇させることが明らかになった.
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