研究概要 |
アルプス地域の調査・研究の結果、次のような観光業と農業の共生システムの地域的形態が認識された。 1.フランス・スルプスでは、観光業が過度に発達したため観光業と農業の共生システムが崩壊したところが多い。しかし、フランス・アルプスのエーギュブランシュコミューン連合区では、1976年6月のコミューン連合区と開発整備業者との地域開発契約によって、観光業と農業の新しい共生システムが構築された。その結果、コミューン連合区は建築面積m_2当たりへの課税による基金を備えており、その基金の3分の1は農業活動の維持に、3分の2は観光の活性化のために配分されている。この共生システムは、草地の保存と利用、観光施設における農業者の雇用などを通じての観光業と農業の共生に大きく貢献している。 2.観光業が過度に発達していないドイツ・オーストリア・スイスのアルプスでは、観光業と農業の共生システムが、強力な直接支払制度(山地地域の農業者への直接支払,環境に特別配慮した生産方法をとる農業者への直接支払)のおかげて存続している.その結果、観光業と農業の共生にとって有用な緑濃き草地景観が維持され,農家民宿,観光施設における農業者の雇用,および地方生産物の販売などを通じて、観光業と農業が共生していることが認識された。 3.ヨーロッパ・アルプスにおける観光業と農業の共生システムのパラダイムを日本の中山間地域に適用するには、まず何よりも、観光業に偏った,地域社会の過度の成長指向を是正することから始め、次に法定外目的税を地方自治体で創設することなどの検討に進むことが望ましい。日本における直接支払制度の充実については制度改善をまたねばならない。
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