研究概要 |
ペルオキシダーゼ(POD)を用いた酵素系漂白剤によるアゾ色素の退色機構を検討するため、色素の混合系における反応選択性について検討した。分析には日立製ダブルビーム分光光度計(U-2000)と日立製高速液体クロマトグラムを用いた。 3種の色素を用い,単独系で活性化剤を用いた退色速度に及ぼすpHの影響を検討し,さらに色素を混合系で用いた場合の退色速度に及ぼすpHの検討を行った。退色速度定数は酸化還元電位が小さい方がより大きくなる。一方,酸化還元電位はほぼ同じで速度定数が全く異なる場合は、色素の立体構造の違いが影響しているものと推定される。 HPLCを用いて混合系における個々の色素の残留量を求め、個々の色素の退色速度を求めた。色素混合系においてオレンジIとHRPとの反応にはオレンジIIやオレンジGが共存は影響なく,反応はすみやかに進行した。一方,オレンジIIとオレンジGは共存することにより反応速度が単独の場合とは異なり,オレンジIIは遅くなり,オレンジGは早くなった。これは,酵素の基質特異性や色素の酸化還元電位の違いにより,色素のラジカル生成速度が異なる事が原因と考えられる。 上述の結果から予想される色素混合系の反応機構は、色素混合系の場合,オレンジIは他の色素と比較して非常に反応が速いため反応直後からラジカルが生成し,その後分解する。一方,オレンジIが酵素と優先的に反応している間、オレンジIIは酸化還元電位も高く酵素との反応がすぐには開始せず、オレンジIの反応終了後オレンジIIの反応が開始すると考えられる。オレンジGの反応開始が遅れるのも同様の理由のためと考えられる。さらに,オレンジIIの反応速度が単独の場合よりも遅くなる原因は,オレンジIIラジカルの一部がオレンジGの活性化剤の役割を果たし,オレンジGに電子の受け渡しをして,オレンジIIラジカルはオレンジIIに戻るために,オレンジII単独の場合よりオレンジII自体の反応が抑制されることによるものと考えられる。
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