研究概要 |
環境汚染物質による代謝変動と毒性に対するミオイノシトール及びフィチン酸摂取の影響について検討してきた。本研究以前に,食餌ミオイノシトールがDDT摂取ラットにおける肝臓脂質の蓄積や肝臓障害の指標となる血清GOTやGPT活性の上昇を抑制することを示していた。本研究では,まず,穀類や豆類に多く含有されるミオイノシトールのリン酸化誘導体であるフィチン酸がミオイノシトールと同様にDDT摂取ラットにおける肝臓脂質の蓄積や肝臓障害の指標となる血清GOTやGPT活性の上昇を抑制することを明らかとした。さらに,ミオイノシトールやフィチン酸による肝臓脂質低下作用は,肝臓の脂肪酸合成関連酵素活性の抑制をとおして発揮されることを示した。加えて,DDT摂取による肝臓脂質の蓄積,過酸化脂質の増大および血清銅の上昇が,食餌炭水化物源をショ糖とした場合に顕著であることを示した。また,食餌炭水化物源がスターチの場合に,食餌ミオイノシトールがDDT摂取による薬物代謝酵素活性の増大のうち,特に生体にとって防衛的に作用すると考えられているPhaseII酵素であるUDP-グルクロン酸転移酵素活性やグルタチオン-S-転移酵素活性の増大を促進することも明らかとした。本研究の結果より,DDTのような環境汚染物質摂取下において炭水化物源としてはデンプンが好ましい可能性が示された。加えて,食餌からのミオイノシトールの供給が重要となる可能性を示した。本研究の遂行過程において,食餌フィチン酸がミオイノシトールとほぼ同様な機能を発揮することが明らかとなってきたことと,フィチン酸についての他研究者の報告などから,フィチン酸が一種のビタミン様物質と考えられるのではないかという報告をまとめることができた。当初,予定していた性ホルモンへの影響やミオイノシトール代謝に関する研究などについては,現在実験を進行中であり,近い将来に明らかにできるものと考えている。
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