研究概要 |
本研究は,重要な食糧である蕎麦について,その加工食品の嗜好特性にかかわる物性を成分との関係から解析し,得られた結果から,蕎麦加工食品の示す物性の分子論的基盤の確立を計ることを試みたものである。多種類の蕎麦粉分画物を用いて,物性と成分を分析したところ,総タンパク質含量と咀嚼性等の物性値との間に高い相関関係が認められ,タンパク質が物性に関与する重要な因子であることが示唆された。蕎麦麺の物性上の特性を明らかにする観点から,種々の麺を調製し物性を解析した結果,蕎麦麺は引っ張り特性などに明確な特徴を示すことがわかった。一方,蕎麦麺には,いわゆる挽きたて,打ちたて,ゆでたて及びとれたての四たてという言い習わしがあり,このようにして調製された麺が美味だといわれるが,これらに関する研究を行った。その結果,蕎麦粉・麺の破断特性等が経時的に変化する現象などが観察された。また,このような物性変化に関係していると考えられる形態変化が走査電子顕微鏡によって観察された。一方,蕎麦果実の貯蔵に伴って,破断エネルギーなどの低下する現象が認められ,また貯蔵温度・湿度が貯蔵による蕎麦の物性変化に深く関与することが示唆された。一方,麺以外の蕎麦加工食品について物性上の特徴を解析した。蕎麦米の物性を解析した結果,蕎麦米はテクスチャー等に特性を示すことがわかった。他方,麺や蕎麦米などの蕎麦加工食品の官能検査を実施して物性・成分との関係について解析したところ,蕎麦加工食品の嗜好特性には幾つかの物性値が重要であることが示唆された。結論として,本研究の成果を通じて,蕎麦加工食品の物性にはタンパク質やデンプンなどの成分が量的にまた質的に関与しているものと考えられる研究成果が得られ,当該物性の分子論的基盤に関する基礎的知見を示唆することができた。
|