研究概要 |
小腸上皮細胞は抗原提示細胞として機能することが知られており,Th細胞への抗原提示には,抗原のプロセシングが重要とされている。また,炎症性サイトカインである(IFN-γ)は粘膜透過性を変動させることが知られるが,抗原の取り込みに及ぼす影響を検討した報告は少ない。本研究では食餌性抗原であるOVAがCaco-2細胞を通過する際に、どのようにプロセシングされるのか、またIFN-γが食事性抗原の取り込みや輸送をどのように調節するのかを検討した。 OVAがCaco-2細胞を粘膜側から漿膜側へ通過する際,インタクトなOVA(45kDa)だけでなくペプチド断片に限定分解されて通過した。IFN-γ処理した細胞では,通過量の増加だけでなく著しい分解の亢進が認められた。免疫組織化学的手法によっても抗原の細胞内取り込みの亢進が観察された。また,フローサイトメトリー法による抗原取り込みは,低濃度より高濃度のIFN-γ処理した細胞で著しく,Caco-2細胞における抗原取り込みと粘膜透過性に及ぼすIFN-γの作用濃度が異なることが示された。今回の結果から,高濃度のIFN-γは小腸上皮細胞における抗原の取り込み,プロセシング,通過を促進させることで積極的に免疫応答を調節していることが示唆された。 今後,細胞質およびライソゾームプロテアーゼの活性と小腸細胞内抗原取り込みに及ぼす種々のサイトカインの影響を明らかにすることが必要である。
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