研究概要 |
今回の研究では,1)台地上での「実験貝塚」,2)海岸部での「実験貝塚」,3)貝塚の発掘調査の3つを行った。1)は,ザルに食用後の貝殻等を入れて,石灰岩二次林に設置した。数年放置したのち,約7cmの実験貝塚を上から3つの層位に区分し,回収した.その結果,貝塚を形成する貝のサイズ=空隙の存在様式によって,各種のボタンやビーズ等,大きさと形状の異なる「遺物」の動態が異なっていた。これらは,土壌動物による影響が大きかった。このような基質により遺物の堆積に差異が生じていることが明かとなった.2)は,海岸部の後部の海岸林内に貝殻を置いたものである.a)食用後のアサリとb)貝殻だけのアサリ,の2つを比較した.これは,食用後のアサリでは,肉汁などが残り,貝類などがその残査を求めて集まるのではないかという従来の説を検証するものである.その結果,a)とb)の間の土壌動物に大きな相違は認められなかった.つまり,貝塚には,肉汁などの要素で陸貝が集まってくるのではないと考えられた.3)の貝塚の発掘では,食後の貝殻投棄と貝塚内への貝類の堆積という2つのファクターのあることが示された。微小陸産貝類の変化は,貝塚内での移動というより,周辺の環境の相違に起因すると考えられた。
|