研究概要 |
本研究は,野外における森林教育・林業教育のあり方について,その理念と今後の課題,森林教育の現状,森林教育効果の把握手法に関して,多面的に検討したものである。また,ドイツ(フライブルク)とイギリス(ロンドン,他)で,森林教育関連事項の予備的なインタビュー調査を実施し,それぞれの国民の森林観,とくに林業観について日本人と比較・検討した。 森林教育の理念と今後の課題については,これまでの実践の中で得られた野外活動の意義上可能性,また活動上の留意点について具体的に明らかにするとともに,森林教育研究の意義と課題についても整理した。 森林教育の現状については,岩手県,秋田県,福島県の事例をとりあげて調査・検討した。主として林業家が主体的に教育活動を実践している事例分析からは,林業関係団体などが市民,行政と協力しつつ林業家を後押しするシステムを構築することで,市民の動きと連動した森林教育実践が可能になること,また行政による森林インストラクターの養成活動は,インストラクターが活躍できる場を確保しつつ,活動の場となるソフトの運営などはフレキシブルな対応が可能なNPO等の民間団体に依拠して進めることが有効なことを明らかにした。 森林教育効果の把握は,質問紙法,ビデオカメラを用いた児童の行動分析,森林活動家のライフヒストリーの分析等を試み,それぞれの手法の有効性を明らかにした。 海外調査では,とくにドイツ人と日本人において自国の林業に対する認識や評価のあり方が大きく異なっていることを明らかにした。 学会セッシヨン「森林教育の課題と展望」では,森林教育の目標は多様であり得るが,実践においては目標の明確化が重要であり,また教育を実施する側が楽しく実践できる取り組みを創造していくことが重要であることが浮き彫りにされた。
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