研究概要 |
授業に関する臨床的研究を,社会的相互作用論の立場と教授実験を組み合わせることで学校現場で実現することを試みた。特に,小学校3年生の除法の単元に焦点をあてて研究をすすめた。その成果として次のことが得られた。 (1)授業において一人の子どもの学習過程を考察するための枠組みを設定した。 一人の子どもの授業での学習の様子をビデオで記録し,そのデータを分析することを通して,子どもは,対象との相互行為,他者との相互行為をしながら,学習する環境を作り出していることを明らかにした。 (2)子どもへのインタビューを通して,子どもの除法の概念が操作的側面と構造的側面をもつことを明らかにした。 除法概念の進展にともなって,子どもの概念が操作的側面に加えて構造的側面をもつようになるプロセスが明らかになってきた。特に,操作的側面の多様性がその進展に重要な役割をもつことが明らかになってきた。 (3)一斉授業における臨床的手法のひとつとして授業でのひとりの子どもの学習過程とインタビューにように多くの子どもの学習に着目することの重要性が示唆された。 学習過程の検討から得られた結果とインタビューから得られた結果が相互補完的関係をもっていることが明らかになった。さらに,いずれにも共通する側面として数学的対象を作り出すことが明らかになった。
|