研究概要 |
本研究は、算数・数学科のカリキュラム開発と評価に、「数学的活動」という新しい視点を組み入れることを意図し、小学校高学年における算数教育と中学校低学年における数学教育に焦点をあて、これらの学校段階間における接続性を、数学的活動という観点から打ち立てることを目的とした。 この目的に対して,本研究では,カリキュラム開発の3つの局面(意図された・実施された・達成されたカリキュラム)に対応して,次のような相互に関連する3つの達成目標を設定した。 1.算数・数学科のカリキュラムを貫く原理としての数学的活動論を構想すること。 2.1つの単元について,小学校高学年と中学校低学年における授業計画を立てること。以上は,意図されたカリキュラムの局面に対応する。 3.実際の授業過程を分析することにより,達成されたカリキュラムを分析し,評価すること。これは,実施されたカリキュラムおよび達成されたカリキュラムに対応する。 1に関しては,種々の数学的活動のモデル論を総合的に検討し,数学的活動と呼ばれる複雑な思考活動の構造を明らかにした。その際,特に,オランダのフロイデンタール研究所が開発した「現実的数学教育」と呼ばれるカリキュラムを文献学的に検討し,その特徴を明らかにした。 2に関しては,金沢市内の公立小学校と中学校の算数・数学科の教師グループと協議し,比例の単元を素材として,小・中の接続性を視野に入れた数学的活動カリキュラムについて検討を行い,その具体案と評価基準の作成した。 3に関しては,平成12年度と13年度にわたり,金沢市内の公立小学校第6学年の2クラスと公立中学校第2学年の1クラスを調査対象として設定し,当該のクラスで営まれる比例の授業を継続的に参与観察した。 以上の課題解決を通して,小学校と中学校の接続性を配慮したカリキュラム開発と評価の基本原理が明らかにされた。
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