研究概要 |
本研究は、教師及び児童・生徒が保持している実験・観察のあり方に関する様々な認識や両者の認識のズレが、実験・観察に潜在する本質的な問題点にかかわる重要な要因の一つではないかとの考えに基づき、教師(教師志望学生を含む)と児童・生徒の実験・観察観を理科の授業実践の事例的検討や質問紙調査の分析・考察を通して探り、理科授業における実験・観察活動の質的改善を図るための示唆を得ることを目的として行った。 その結果、教師志望学生は現職の熟練教師と異なり,実験・観察の方法や結果に関する意識や思考の点で教師と子どもの間にズレが存在する可能性があることを,理科授業の構想・実践に際してあまり考慮していないという実態が指摘された。また,教師志望学生には実験・観察のもつ体験的な効果や子どもの興味・関心を喚起する側面を重視する傾向が認められたと同時に,実験・観察の意義やあり方に関する幾つかの知識・理解や考えを彼らは保持しているものの,それらを相互に関連づけて体系化するまでには至っていないのではないかという実態などがうかがえた。さらに、中学生を対象とした実験・観察観に関する調査では、彼らは実験・観察の体験的,活動的な側面での楽しさだけでなく,知的な理解や関心の高まりも求めているという実態がうかがえた。そうした生徒のニーズを生かしていくための理科授業や実験・観察のあり方が、今度さらに検討していかなければならないと考えられた。と同時に,中学生は実験・観察によって自分の考えを確かめることや,そのための手順や方法を自分たちで考えることに対しては,理科授業の楽しさをあまり実感してきていないのではないかと考えられた。このような実態が教師自身の授業観や実験・観察観を反映しているとすれば、理科授業や実験・観察に対する教師自身の認識を問い直していくことが,その改善のための重要な鍵となると考えられた。
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