研究概要 |
文字学習システムを開発する上で,システムが学習者の手書き文字を教師等の人間による主観評価に近い評価を行うことは重要な課題である.本論文の前半では,手書き文字の変動評価において文字パターンにボケ処理を導入することにより,従来法よりも人間の主観評価に近い評価が可能な方法を提案する.この手法は,個人が文字種ごとに反復記入した100文字程度の手書き文字を方向線素パターンに変換した後,これらにボケ処理を加えたパターンを重ね合わせたものについて方向線素エントロピーを算出するものである.この方法により,従来の文字変動評価法に比較して文字の変動量が小さい場合の評価を主観評価に一致させることができること,30文字程度の文字数で変動評価値が推定できること等を明らかにした. コンピュータを利用した教育において個性ある手書き風の文書が利用できれば,教育効果も高まり,意義がある.そこで,研究の後半では,ユーザの手書き文字を1文字種につき1文字収集した後,ストローク毎に方向線素の時系列パターンに変換する.このパターンに対してファジールールに基づくボケ処理を加えて得られる重みの分布に基づいて,線素を生成することにより変動を付加した手書き風文字集合を生成するモデルを考案した.このモデルは,ユーザのことばによる任意の文字変形を可能とするものである.モデルに基づいて文字生成実験を行った結果,本手法により,筆記者の手書き文字を構成する方向線素の方向成分よりも位置成分の変動が大きい文字が生成でき,個性が感じられかつ変動を伴った手書き風文字を生成できる可能性を得た.
|