研究概要 |
研究成果の概要は以下の通りである. (1)場所と課題の複合操作による環境的文脈が自由再生におよぼす効果 4つの実験によって,場所と課題を組み合わせて操作した文脈の効果と,それぞれの要因の効果を調べた.その結果,場所と課題を組み合わせると有意な文脈効果が生じるが,個々の要因のみでは文脈効果が生じないことを見いだした.また,4つの実験結果から,複合的文脈は,偶発的文脈というよりは相互作用的文脈として機能することが示唆される. (2)自由再生における背景色の環境的文脈効果 2つの実験を行った.最初の実験では,項目ごとの背景色が変化する条件下で,2つ目の実験では項目提示を通じて同一の背景色の条件下で,文脈効果を調べた.同時に,文脈要因と直交させて,項目の提示速度を操作した.その結果,項目ごとの背景色が変化する条件下では,背景色の文脈効果が生じること,その効果が提示速度効果とは独立であることを見いだした.また,項目提示を通じて同一の背景色を用いた場合,文脈効果は生じなかった.これらの結果は,背景色文脈が複合的文脈や場所文脈とは異なる性質を持つことを示している. (3)反復における環境的文脈の多様性が自由再生におよぼす効果 4つの実験を行った.いずれにおいても,同一材料を2回反復符号化させ,自由再生成績を比較した.2回の符号化は同文脈あるいは異文脈のもとで行わせた.文脈操作は,場所,符号化課題,社会的要因を組み合わせて操作した.その結果,同文脈反復の方が異文脈反復よりも良い自由再生成績を示すことを見いだした.この結果は,複合的文脈が脱文脈化しないことを,むしろ示しているようである.反復における文脈の多様性と知識形成の過程は,はるかに複雑のようである.
|