研究概要 |
本研究の目的は,「総合的な学習の時間」を支える情報活用の実践力育成のためのカリキュラム開発と試行である。まず,第1年次には「総合的な学習の時間」の目標を整理し,その中で行われる学習活動を分析して,情報活用能力,特に情報活用の実践力との関連性を考察した。その結果,情報活用の実践力が総合的な学習の時間の学習活動を支える情報収集能力,問題解決能力,表現・コミュニケーション能力と密接な関係にあることが明確となった。 第2年次には,試行的なカリキュラム案を開発し,そのねらいの達成やカリキュラムの評価を行うために,大津市立平野小学校,野洲町立祇王小学校,大津市立粟津中学校でカリキュラムの試行を行い,それを分析し,実践事例の研究を行った。その結果,総合的な学習の時間の中に意図的・計画的に情報活用場面を埋め込み,情報活用の実践力を総合的な学習の時間の中で並行して育成していく内在タイプのカリキュラムと,IT学習等で集中的に情報活用の実践力育成に取り組み,それとは別の時間で総合的な学習の活動を行う外在タイプの2つのカリキュラムの各々の特徴と問題点とが明確となった。具体的には,内在タイプは児童・生徒の主体的な学習を促進するが,学習者間での到達度の差が多きく,外在タイプは学習者間での到達度の差は大きくなかったが,情報活用の実践力を発揮する学習場面を児童・生徒が把握しにくい傾向があることが明確となった。 最終年次には,前年度に開発したカリキュラム案の修正を行い,大津市立平野小学校,京都市立大藪小学校で,総合的な学習の時間を支える情報活用の実践力育成のためのカリキュラムを実施し,実践研究を行った。その結果,単にパソコンやインターネットが操作できるというスキルレベルではなく,生きる力に結びつく総合的な学習の時間を支える情報活用の実践力を育成するには,直接体験活動と結びついたメディア活用を通して情報活用の実践力を育成していくことが有効であることが実証できた。すなわち,ネットワークで得た情報をネットワークで発信するような閉じられたメディア活用ではなく,フィールドワークや他者へのインタービュー,ネットワークでの情報発信と対面形式の発表会とを有機的にカリキュラムの中に埋め込んでいく開かれたメディア活用の活動をカリキュラムの中に系統的に配置していくことの有効性が確認できた。
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