研究概要 |
平仮名書きの学習初期にある子どもたちの中に,正しい字形で平仮名を書くことができない子どもたちが少なからず存在している。そのつまずきの背景には,認知機能や運筆機能の未発達,自らの誤字を修正する機能の未獲得などがある。そこで,書字学習に困難を示す子どもたちの書字特性を分析し,その改善を促すための指導プログラム作成に向けた一連の基礎的研究を実施した。 本研究期間内では,次のような内容を中心として検討を行った。 1)就学前の書字学習初期にある年長幼児を対象として,描画の発達状態と運筆機能の獲得状態との関係を分析し,書字学習の基礎的活動としての表現活動の意義について検討した。 2)通常の学級に在籍する児童を対象として,一斉指導における書字指導方法について検討するとともに,書字学習に困難を示す児童の書字特性に関する資料の収集を行い,書字結果に与える筆圧の影響やその改善を促すため指導方法について検討した。 3)低学年児童を対象として,利き手による運筆機能の発達特性に関する資料の収集を行い,幼児の筆圧に関する基礎データを参考にしながら,運筆における利き手の影響について検討した。 4)視覚障害児を対象として,描画における運筆機能の特性を分析し,筆記用具を使用した表現活動における視覚機能の役割について検討した。 5)低学年の児童の生活環境において,文字をコミュニケーションに使用する機会として利用可能な学習場面について整理した。そのひとつとして「文通」を取り上げ,文通による学習が持つ意義とそれを導入し継続していくための諸課題について検討した。
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