研究概要 |
近年の青少年の喫煙・飲酒・薬物乱用問題の深刻化にともない,学校教育における有効な防止教育への期待が高まってきている。従来の学校健康教育は,知識の獲得に専ら焦点を当てたものであり,行動変容という観点からは有効ではなかった。しかしながら,我が国でも最近になって,妥当な行動科学の理論に基づいた喫煙・飲酒・薬物乱用防止プログラムや教材が開発され,広く利用できるようになってきている。ただし,多くの教師は,そうしたプログラムや教材を適切に活用するのに必要な能力が不十分なために,期待される効果をあげえないのが現状である。そのため,行動変容に有効な喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を普及するためには,現職教師に対する指導者研修が極めて重要な役割を果たすものと考えられる。 そこで本研究では,行動変容に有効な喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を教師が適切に実施するために必要な能力を形成できるように,ワークショップ(参加型の研修会)を企画・実施し,その形成的評価を行うこととした。本年度も昨年度に引き続いて,福岡県教育庁が主催した薬物乱用防止教育の研修会を企画・実施し,その形成的評価を試みた。 研修会の前後に実施した質問紙調査の結果によれば,ほとんどの参加者はワークショップ(参加型の研修会)を肯定的に評価していた。また喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を実施する自信がある者の割合も,研修前の25%から研修後は69%に増加していた。そして,研修会がわかりやすいと感じたり,有益だと感じたり,楽しいと感じているほど,研修会終了後の時点で喫煙・飲酒・薬物乱用防止に関する指導を実施する自信を持っていた。 以上のことから,ワークショップ(参加型の研修会)を開催することは都道府県教育委員会レベルでも可能であり,参加者の喫煙・飲酒・薬物乱用防止教育を実施する自信を高め,取り組みへの意欲を促進するのに有効であると考えられた。
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