研究概要 |
パソコンの普及で計算機援用による音楽学習システムは、ますます身近な存在になり、聴覚障害者も容易に音楽の楽しさを実感できるようになった。 本研究ではこのようなコンピュータ支援によるシステムを聴覚障害者の音楽教育に応用する場合の条件を探求し,さらにその過程で、従来データの乏しかった聴覚障害者の音楽認識の課程を調査した. 特に聴覚障害者同士でリズムを主としたアンサンブルを演奏するために、どのような同期信号とその表示方法が有効であるかを知るための実験を行い、指示信号と実際の演奏時刻の偏差を測定した.この結果から、楽譜のような予測情報を含む視覚情報の有効性や演奏予測やフィードバックの有無との関係が明らかにされた。一方,長時間にわたって楽譜に注力することは視力の疲労を伴い困難であり,そのような場合には,聴覚障害者自身がリズムを学習し、それをリファレンスにする傾向がみられた。この場合に生成されるリズムは偏差が一定でなく,周期的に変動していることも明らかにされた. 視覚情報、音声情報以外に皮膚感覚を直接振動によって刺激するワイヤレス音感認識装置を試作し、重度障害者のダンス訓練に応用する場合の基本特性を取得した。また音楽情報とくにリズムを伝達する場合の振幅・周波数特性、赤外線伝送特性を解析し、ステップ練習に応用する場合の問題点を明らかにした。さらに、皮膚神経を振動以外に直接電気パルスで刺激する音感認識装置の可能性に注目し,そのための基礎データを取得した。 今後これらの方法を総合的に利用し,一人一人の個性に合った刺激とフィードバックを実現するシステムを実現してゆきたい.
|