研究概要 |
本研究は,多変量モデルのパラメータ推定において,従来の推定手法が何らかの欠陥をもち使用する上で修正が必要な問題を取り扱い,そのような問題を解決しうる有効なベイズ推定量の開発とその際必要とされる新たな推定理論の展開及び現実のデータ解析での有用性を示すことを目的として行われた。 特に,こうした推定問題をすべて調査し,各問題についてミニマクス性・許容性などの決定論的結果を明らかにし,ベイズ的性質及び応用的側面などをまとめ上げて,この分野の研究を体系づけた本格的な研究資料を作成した。その過程において,多重共線性を解決する経験ベイズ推定法及びスタイン推定法に基づいたモデル選択法などの提案を行った。また非心母数の推定とマローズ統計量の修正,重相関係数の推定と自由度調整済決定係数の修正など,応用上有用でしかも理論上有効な推定手法を導出した。 多変量回帰モデルにおける回帰係数行列の推定について,最小2乗推定量を改良する縮小推定量の導出と改良のロバストネスを示すとともに,最近興味がもたれている多変量混合線形モデルにおける予測問題が行列平均の経験ベイズ推定の枠組みでとらえられることに注目して,こうした問題において有効で有用な推定手法の導出を行った。 多変量回帰モデルにおける共分散行列の推定において平均の情報を利用したミニマクス推定量の導出が望まれてきたが,本研究課題において2種類のミニマクス推定量を新たに導出することに成功した。このうちの一方の導出方法は一般化分散の推定にも適用可能であり,従来の結果の別証明が与えられた。
|