研究概要 |
傾向性仮説検定は1960年代の初めにBartholomewらによって,主として正規分布の平均系列に関する単調仮説を中心に発展させられた.その後,正規分布の分散,Γ分布,2項分布系列等への発展をみたが,本研究課題においては当初正規分布の平均系列に関し,その1階および2階差分に対する単調仮説の研究を行った.これらはそれぞれ応答曲線の凸性,S字性といった形状制約に相当し,ノンパラメトリックな用量反応関係解析に本質的な仮定であるが,これまで単調仮説に比べあまり研究が進んでいなかった.そこで,単調仮説に対する最大対比型検定統計量max tを凸性仮説,S字性仮説に拡張し,その分布関数計算のための効率の良いアルゴリズムを得,さらに,線形検定統計量との比較において,優れた検出力特性を有することを確認した.また,凸性を積極的に利用した応答曲線の同時信頼区間構成法を提案した.この研究を受けた最終年度はとくに次のような研究を行い成果があった. 1.正規分布で得られた同時信頼区間に関する結果を2項分布系列に拡張する研究を行った. 2.2×I×J型分割表において,3次元交互作用に関する単調仮説に対しmax t統計量を拡張した最大対比型検定を提案した.これは精神分裂病患者と健常者の二つの遺伝子座位における対立遺伝子頻度の同時分布比較において合理的な仮説を設定し,かつその適切な検定法を提案したものであるが,3次元交互作用の傾向性仮説への挑戦であること,また当該分野で本質的なスパースな分割表に対して正確法を提案したことで評価されている. 3.単調制約を満たす正規分布の平均系列に関し,相続く平均の差の片側および両側信頼区間の長所を兼ね備える信頼区間構成の研究を行い成果があった. 以上の成果は別記するように統計学関連の学術誌および、国際会議・学会において発表された。
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