研究概要 |
高性能計算機/計測装置を利用した数値シミュレーション/実計測から得られる大量データに潜む対象の定性的特徴を直感的に理解し,かつ効果的に解析するために,コンピュータグラフィックス技術を援用し,数値データを視覚的な形式に変換する可視化技法は,現在さまざまな科学技術分野における必要不可欠な方法論として定着している.中でも昨今の計算機資源の急速な進展により計算/計測が可能となった,3次元空間に稠密に分布するボリュームデータ内部の複雑な構造や振舞いを探究するために,対象ボリュームに対して視線方向に標本値の積分を実行し,2次元ディスプレイ上に射影することによって,半透明化された全体像を得るレンダリング技法-ボリュームレンダリング-に対しては,特に大きな注目が寄せられている. そのボリュームレンダリングによる対象の可視化効果を大きく左右する重要な要因の一つとして,射影に先立ち,対象の物理フィールドをカラーや半透明度等の光学的パラメタフィールドに変換する伝達関数の指定があげられる.ところが従来法において,その決定は主としてユーザの経験と勘に依存しており,対象ボリュームの標本点数に比例する膨大な計算量もつボリュームレンダリングを試行錯誤的に繰り返し,解析に十分な精度をもつ伝達関数を決定するには,現在のGWSレベルの機能をもってしても多大な時間を要し,ユーザの解析意欲を完全に殺ぎ落とす結果となってしまっていた.そこでユーザとの対話の中で伝達関数設計を支援する環境を,可視化ソフトウェアシステム側が提供すべきであると考えられる. 以上のような背景から本研究では,与えられたボリュームデータを,連続等値面群を用いてフィールド方向に輪切りにし,その位相同値性を調べることによって,ボリュームのフィールドトポロジーを表現するハイパーレーブグラフを抽出し,それに基づいて,重要なフィールド分布の特徴を強調する伝達関数を半自動的に設計する手法を開発した.さらに同法を,事実上の標準可視化ソフトウェアであるAVS上のモジュールとして実装し,具体的な事例適用により,その効果を検証した.
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