研究概要 |
今後さらにマイクロプロセッサの高性能を追求するためには、命令の先行処理技術である分岐予測と投機的実行の性能を向上させる必要がある。本研究では、互いに直交的な方式を組み合わせるハイブリッド分岐予測方式で高性能を達成することを目指した。以下に成果を述べる。 分岐における両パス実行 SPECint95を用い性能評価を行った結果,8命令発行,2ポートの命令キャッシュ,4ポートのデータキャッシュ,5個のコンテキスト数のプロセッサにおいて,両パス実行は単一パス実行に対し,最大20.5%,平均11.2%の性能向上を見込めることが分かった.また,両パス実行の判定に使用する表における競合を抑制するために,新たに分岐フィルタを導入した結果,さらに最大8.1%の性能向上が得られた. 値予測を利用した分岐予測機構 分岐命令のオペランドとオペコードを予測し,分岐方向を予測する機構である.従来の分岐予測機構とのハイブリッドで用いる.SPECint95を用いた評価の結果,4Kバイトのgshareに対し、最大2.55%ポイント,平均0.84%ポイント予測精度を改善できることを確認した.また,この予測精度の改善により,今日のスーパスカラ・プロセッサの性能は最大5.95%,平均2.43%向上し,より広い命令発行幅とより深いパイプラインを持つ将来のスーパスカラ・プロセッサでは最大14.14%,平均6.09%の速度向上が得られた. 破壊的競合を低減する分岐予測方式 パターン履歴表を2つに分離し、分岐方向の偏りが同一の分岐を一方のテーブルにのみマッピングする事により、破壊的な競合を無害な競合に変換する。Gshareに比べて0.05〜0.89%予測精度が向上し、SPECint95による性能評価で平均7.1%の性能向上が得られた。より深いパイプラインとより広い命令発行幅の場合、平均14.6%の性能向上を確認した。
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