研究概要 |
本研究は代理サーバーのコンセプトを拡張し,ネットワークシステムの様々な面での使い勝手の向上の実現を目指した研究である.具体的にはクライアント・サーバーアーキテクチャのもとで,(a)アプリケーション,サービスプログラムの双方に変更を加えないで,機能拡張を実現する方式,(b)ネットワークアプリケーションシステムの将来像の展望の確立,の2点を主たる研究目標とした.その結果(a)に関しては,トラッパーと呼ぶソフトウエアをネットワークとクライアントに挿入する方法により,当初の目的を実現できることを実証した.そして電子メール送受信とデータベースアクセスについてのアプリケーションを作成し,それを教育支援システムに適用することにより,その有効性を検証することができた.(b)に関しては,従来のコンピュータ中心の発想であるHCI(Human-Computer Interaction)というコンセプトを克服し,普通の人々の日常生活に密着した種々の活動を支援するための枠組みである"日常的計算(Everyday Computing)"というコンセプトを提案するに至った.これは遍在的計算(Ubiquitous Computing : UbiComp)の概念,半導体技術やセンサー技術,あるいは無線通信技術を基礎としている.UbiCompがあくまでも「計算機による日常生活の改善」という立場に留まっているのに対し,「コンピュータを追い出せ!」というスローガンの実現を目指すものである.言い換えれば「アトムとビットの結合」となる.コンピュータが伝統的な「ディスプレイ,キーボード,マウス」というスタイルを捨て去り,日常生活の道具(人工物)がコンピュータ(CPU)の入出力デバイスとなるような世界の実現を目指すものである.以上のことから本研究は,今後の展開も含めて当初の目的を達成したものと考える.
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