研究概要 |
本年度は,人工生命による遺伝子制御ネットワークの構築のため,以下のシステムまたはアルゴリズムの開発を行った. 1.配列類似度による遺伝子共通保存部位探索システム 機能的に同一もしくは近いと考えられる遺伝子の集合が与えられたとき,それらの中で共通に保存されている配列パターンを探索するシステムを開発した.本システムの特徴は,相互に類似した配列同士を類似性スコアを辺の重みとして結んだグラフにおいて,密度が最大の部分グラフを取ることで共通保存部位を検出することである.密度を評価尺度とすることにより,偶然に配列が類似した部位を除くことができると考えられる.実際に,大腸菌の二成分系や,転写制御遺伝子ファミリ,熱ショックタンパク質ファミリなどから既知の共通保存部位が検出でき,有効性が確認できた. 2.発現パターンによる遺伝子の分類システム DNAチップやマイクロアレイ等による実験から得られる発現パターンのデータには大きな測定誤差が存在することが知られており,その利用の障害となっていた.そこで,フーリエ変換,ウェーブレット変換等を使って発現パターンを周波数成分に分解し,高周波領域に現れるランダムノイズを除去することにより,測定誤差の影響を抑えながら,遺伝子発現パターンを比較し,遺伝子を分類できるシステムを開発した. 3.代謝反応パスウェイの多重アライメントアルゴリズム 代謝反応パスウェイは,最も良く調べられている遺伝子間相互作用のネットワークである.複数の代謝反応パスウェイ同士を比較し,その中で共通して保存されている部分ネットワークを見つけることのできるアルゴリズムを開発した.
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