研究概要 |
質問や文献の内容が,キーワードの代わりに概念階層中の語義に置き換えて表されており,それらの間の概念的な関連性を考慮に入れた検索ができるとしよう。すると,質問や文献のキーワード間に表記上の違いがあっても概念階層を通じてこれら違いを吸収でき,より優れた検索結果が期待できる。本報告で1つ目の話題として取り上げるのは,優れた検索結果を導きながらかつ,簡潔で質問との概念的な関連も明確になるような,文献や質問の内容表現を得る方法についてである。 2つ目の話題は,個人のもつ適合概念を学習しながらかつ,優れた検索結果を導く方法についてである。ユーザの意向を対話的に学習し,検索効率を上昇させるにはどのようにすればよいかが中心になる。最初の話題で利用した概念階層は,それを利用する各人の共通認識の上に立って編集された,いわばグローバルに通用する概念が体系化された辞書である。しかしながら,グローバル辞書を使っただけでは,各人固有の物事に対する捉え方を十分反映できない。この問題に対し,検索結果を電子図書館の形でまとめ直し,その中をブラウジングしながら,望む文献を探すという枠組みを提案する。ブラウジングの際,ユーザの種々に変動する検索意向を「適合概念」として対話的に学習し,学習の結果を以降のブラウジングに反映させてゆくことで,効率的な検索を可能にするのである。学習される適合概念は,グローバル辞書に対峙させて,個人用のローカル辞書といってよい。 提案したこれら方法の有効性は,検索システム評価用のコレクションを用いて確かめた。最後に,ブラウジングを繰り返すうち,文献配置の全体像が自然と明らかになってゆくような電子図書館とこれを扱うためのナビゲータを,インタフェース面を含めて設計した。
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