研究概要 |
本研究はコンテクストに応じた意味理解を行う複数の主体が相互作用を経て意思決定をするマルチエージェントシミュレーションシステムを構築し,分析することを目的としている.具体的な事例として,水害時の意思決定を取り上げる.その結果から,災害時の情;報提供のあり方を模索する.対面調査によるプロトコルデータから,認知的な判断過程を明らかにすることを試みた.その過程から,被験者の行動決定を探り,マルチエージェントを設計する.そのため,23人の被験者に時間順に水害レベルの上がる水害時を想定したビデオを見せ,避難について考えたことをインタビュアーとの対面調査により,プロトコルのデータを得た.そして,命題を集計し分類するための決定過程のモデルを示し,そのモデルに従った命題間のつながりを抜き出し集計する.次にプロトコルデータから得られる思考過程を追うことでコンテクストに応じた意思決定過程をモデル化する.その場合,「水害経験あり」と「なし」の集団における比率を変化させることで,時間ごとの集団の意思決定がどのように変わってくるかを分析する.結果から,個人の意思決定の際,経験のあるなしは避難する・しないに影響はしないが,避難の決定に要する推論を短くすること,避難行動を見たときに,経験のあるなしは準備に関する発話量に影響していることが判明した.
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