研究概要 |
本研究では不規則現象を人が曖昧に認識することによって得られるファジィ確率ベクトル(I型ファジィ確率ベクトル),および人の気分・感情や国・地方の経済状況などのように元来暖昧かつ不規則に変動すると思われる現象の数学モデルとしてのファジィ確率ベクトル(II型ファジィ確率ベクトル)を提案し,それらの期待値や分散,自己共分散などの統計学的モーメントの合理的な定義法を提案した. また,I型ファジィ確率ベクトルの拡張したI型ファジィ確率過程を定義し,その背後のシステムに含まれるシステムパラメータの推定法を提案,その有効性をシミュレーション実験により検証した.さらには,II型ファジイ確率ベクトルおよびその統計学的モーメントの推定法を,自転車のデザインに対する好みの統計学的処理に応用することを試みた. 以上のように,曖昧性と不規則性を有するデータに対して,提案した手法による統計学的処理の有効性を一応確認することができたが,今後の研究課題としては次のような項目をあげることができる: 1.現在までの研究結果をさらに発展させるためには,I型,II型を問わずファジィ確率ベクトル・ファジィ確率過程に関する理論的考察をさらに進める必要がある.特に,システムパラメータの推定量の漸近的性質を考察する際に重要となる,定常性・エルゴード性あるいはファジィマルチンゲール等の概念をどのように導入するかについて,システムモデリングの立場より深く考察する必要がある. 2.上記理論的考察をベースに,既に提案しているシステムパラメータの推定法の漸近的性質を理論的に検討すると共に,より合理的なシステムモデリング手法,特にパラメータの推定法およびシステム構造の決定法の確立を目指す必要がある. 3.上記モデリング手法をコンピュータプログラム化し,シミュレーション実験によりその有効性を確認するとともに,経営・経済システム等の実社会システムへの応用を試みる.
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