研究概要 |
・表層崩壊の発生メカニズムを明らかにするため,その最も重要な素因の1つである風化帯構造とその形成メカニズム,およびそれらと崩壊との関連を以下のように明らかにした.対象とした岩石は,花崗岩類,火砕流凝灰岩,堆積岩である. ・花崗岩類に典型的な風化プロセスとして,マイクロシーティングをともなうタイプの風化と球状風化とが認められた.マイクロシーティングによって薄板状になった花崗岩は,斜面表層部でゆるみ,崩壊の素因となる.球状風化は,マイクロクラックの形成と化学的な溶脱との相互作用で進む.深層風化によって中程度に風化した花崗岩は,掘削や崩壊によって地表に露出すると急速に緩む.降雨浸透水はこの緩んだ部分を主に流れ,この部分の飽和と間隙水圧の発生,およびサクション消失による粘着力減少とが崩壊の主たる要因となる. ・火砕流凝灰岩には,非溶結のもの,気相晶出作用を受けて軟岩になったもの,および強く溶結したものがある.非溶結火砕流凝灰岩の風化帯は明瞭なフロントを持ち,浸透水は風化フロントとで毛管障害効果によって下方浸透をさえぎられる.その結果,降雨時には風化帯の自重が増加し,これとサクション消失による粘着力減少とが崩壊の主たる要因となる. ・気相晶出作用を受けた火砕流凝灰岩の風化帯の特徴は,強く風化した風化帯の下底が明瞭なフロントであり,その上に岩石が斜面に平行な板状に割れたゾーン(剥離帯)が形成されることである.このゾーンの下の岩石はほとんど割れ目を持たず難透水である.剥離帯以浅の層での間隙水圧の上昇とサクション消失による粘着力減少が崩壊の主たる要因となる. ・堆積岩の風化帯は,酸化フロントと溶解フロントとで特徴付けられる.これらの風化帯は,地表からの浸透水と岩石との連鎖的な化学反応で説明される.堆積岩地域では,酸化フロントあるいはその下にすべり面を持つ地すべりが多く発生しており,これは,上記の風化による物性変化を反映している.
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