研究概要 |
本研究では超短パルス電子ビームを多段自動加速方式により実現し,この方式で二つのビーム長の異なる大強度電子ビームからの電磁波放射を観測した。ビーム長が装置長より長い場合と短い場合の電磁波放射現象の比較検討を行い,短いビームを用いた場合に,超放射の特徴に一致する現象を観測した。 4段自動加速法方式を用い,ブルームライン型パルス整形線路から射出された,パルス幅10ns,エネルギー550keVの大強度相対論的電子ビームを,パルス幅1ns,エネルギー1.1MeVまで圧縮することに成功した。 この超短パルス大強度電子ビームを,一様磁場中に置かれた長さ60cmの円筒導波管中に入射したところ,ビーム速度と電磁波の群速度が一致する条件で,発生周波数の絞られた(17GHz付近)強い電磁波の出力を得た。この周波数は理論的に予想されたものに一致する。一方,装置長より長いビームを用いた場合,多くのモードからの多数の周波数が観測された。装置長(共鳴領域長)を変化させた実験では,いずれの場合も,発生周波数は距離とともに絞られるが,短いビームの場合その傾向が顕著であった。電磁波出力に関しては,いずれの場合も装置長とともに指数関数的に増大する。装置長より短いビームの場合の方が長いビームに比べ,伝搬距離に伴う出力の成長は早く,60cmの伝搬後の出力は短いビームの方が約10倍大きかった。ただし,短いビームの電磁波出力にはある距離で飽和することが観測された。これは,電磁波の再吸収が起こっているものと考えられ,外部磁場を増す等で対処が可能と考えている。粒子シミュレーションコードKARATを用いた結果も,実験結果がビーム長の効果であることを示した。 これらの結果は超短パルス大強度電子ビームによるサイクロトロン超放射で期待されるものと一致する。更に,発生電磁波出力への電流依存性等を検証する必要がある。
|