研究概要 |
3次元クーロン結晶の立体的構造を解析するため,下から数層のみを照射するようにした青色のアルゴンイオンレーザー光(488nm)と,電極に垂直な方向にシート状に広げた赤色の半導体レーザー光(690nm)を同時に照射し,横方向からは赤色のフィルターを通して赤色の散乱光のみを観察した.この方法で,上からと横からの微粒子配列と格子間隔を,同位置,同時に調べ,精密な解析を行うことが可能となった.また,1/30秒毎の3次元的な微粒子配列の変化を画像から調べ,結晶構造の遷移過程を解析できるようになった. こうした解析手段を用いながら3次元クーロン結晶を形成し,(011)面や(001)面が電極に平行な体心立方様構造,(111)面が平行な面心立方様構造,(0001)面が平行な六方最密様構造などが確認された.格子間隔を調べると,体心立方様構造では3軸の長さに1:1.56:1.53の関係があり,体心正方格子と呼ぶのが適当であることがわかった.面心立方様構造では,最密面の格子間隔とそれに垂直な格子面間隔の間に1:0.83の関係があり,面心立方格子の場合の1:√(2/3)=1:0.82に極めて近いことがわかった.また,fccとbctの共存や,構造間の時間的遷移が観察され,その構造変化の解析を行った.その結果,fccとbctの遷移は,fcc(111)面とbct(011)面との間の"すべり"により生じ,その面内でクーロンエネルギーが最小となるように変化した結果,bctに近い構造となったものと理解された.さらに,その"すべり"の方向について調べると,fcc[110]およびbct[111]方向であり,鋼のマルテンサイト変態と符合することがわかった.
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