研究概要 |
永久磁石多極カスプ配位を用いた超冷中性子(UCN)磁気ボトルが,井上,二瓶,秋山により提案された。UCNの閉込めは,ボトル中のUCN崩壊時に放出されるプロトンを検出して確認できる。プロトンはボトル天井に設置され,且つ-50〜-100kVにバイアスされた検出器で検出される。ボトルは原子炉近傍に設置されるため,中性子とγ線に対して不感な低エネルギープロトン検出器の開発が必要となる。 本研究で採用した検出器はCrを含むルビーシンチレータ(Al_2O_3(Cr_2O_3))である。このシンチレータの(n, p)反応割合は非常に小さく,且つ薄片化が可能なためγ線の影響も非常に小さくできる。 本実験での厚さは0.02mmである。本研究で得られた結果を以下に述べる。(1)^<241>Am線源からのα線(5.5MeV)とバンデグラフ加速器で加速されたプロトン(0.4〜1.0MeV)を,低雑音型光電子増倍管の表面に取り付けたシンチレータに照射した。1個の荷電粒子をシンチレータに照射した場合,増倍管からの信号が,多数の孤立した短いパルス信号から構成されていることが判明した。信号全体の減衰時間は約2.4msである。(2)幾つかの波長を持つ発光スペクトラムが分光器により観測された。この結果は報告されている他のデータともほぼ一致する。(3)検出器系の中性子とγ線に対する感度を,KUR(京大原子炉)の炉室内で測定したが,両者に対して殆ど不感であることが確認された。(4)本研究の目的を達成する結論が得られた,即ち以上の実験結果から得られた特性を組合せて使用すると,中性子とγ線に不感な,且つ高いS/N比を持つ低エネルギープロトン検出器系の製作が可能である。
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