研究概要 |
いわゆるオゾン層破壊や対流圏オゾンの増加による温室効果で重要な下部成層圏〜上部対流圏でのオゾン変動を明らかにするためには,オゾン直接測定器の観測精度向上が必要である。ところが,実際の観測条件と同じ低い気圧での較正を行うことができる,取り扱いが簡便な較正装置はこれまで存在していない。そこで本研究では,実際の観測条件に近い状況で測定器の較正を行うことで,実際の対流圏上部から成層圏でのオゾン観測精度を向上させることが目的である。 はじめ,市販のオゾン較正装置にテフロン製の減圧チャンバーを組み合わせた装置を作成したが,調整が難しく一般的に使用できる装置ではなかった。そこで,より安定なオゾン発生装置を独自開発する予定であったが,市販の装置にいくつかの改造を行うことで,精度を失うことなく減圧を安定に行えることがわかり,それにより気圧100〜1000hPaおよびオゾン濃度0-10ppmvの範囲で安定にオゾン濃度を較正することが可能になった。実際に,航空機搭載用の紫外吸光方式オゾン測定装置の較正に用い,オゾン測定装置の絶対精度をすべての気圧範囲で3%以内で較正することができた。その際,相対精度+非直線性が±300/気圧(hPa)ppbv以内であることを確認することができた。 ここで較正したオゾン測定器は,3回のフィールド観測キャンペーンで使用し,熱帯域での上部対流圏オゾン分布に及ぼす対流による上方輸送の影響について明らかにすることができた。しかし,開発したオゾン較正装置をフィールドで簡便に使用できるように,コンピューターを内蔵させ,測定手順や較正データ取得を自動化することは本研究期間中にはできなかった。現在,本研究で開発した装置によって較正した装置を使用したオゾン観測について,いくつか研究結果を発表しつつある。今後,較正装置については動作自動化まで開発を行い,発表する予定である。
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