研究概要 |
1.河川,河口,内湾での溶存有機物の動態 疎水性画分のDOCは陸域から流入したものが、ほとんど濃度変化せずに湾外へ流出する。それらは光などで変質することから,紫外部吸光度,分子量などか変化する.一方,夏期には親水性の易分解性と難分解性DOCが湾奥で生産され、湾口に流下する従い前者は生分解を受ける。しかし,それらの紫外部吸光度,分子量などはほとんど変化しない. 2.PAHsの地表面での光変換 降下粉塵の一次減少速度係数の大きさから,無降雨期間が10日を越えると降下粉塵のPAHs量はかなり減少する.今後,変質後の物質の有害性に注目する必要があるものの,光変換による物質量変化をモデルにおいて十分に考慮すべきである. 3.水域における有害化学働質濃度予測 化学物質のリスク評価を目的に、物質特性、流域特性から水質、底質の有害化学物質濃度を予測する簡易なモデルの作成した.実測値をうまく予測可能であった. 4.広島湾流域におけるPAHsの動態 広島湾流域において降下粉塵量を測定し,また合流式下水処理場,雨水流出管において降雨時のPAHs流出維量を測定し,両者を比較した.降雨強度,降雨量が大きいと流域に堆積した粉塵,ならびにそれに取り込まれたPAHsの大部分が下流の水域に流出することがわかった.また,広島湾で十数種類の魚を採取し,それらの器官ごとのPAHs濃度を測定した.生殖器,脳といった脂肪割合が高い器官で高濃度のPAHsが検出され,生態系への影響が懸念される.また,河川,大気からのPAHs流入負荷量と湾水の交換速度をもとに広島湾水中のPAHs濃度を予測したところ,実測値とかなりよく一致した.各種有害化学物質濃度とそれらの生態毒性値より,リスク評価を行ったところ,広島湾では各種PAHsのリスクが対象とした化学物質の中では最も高く,そうした物質群の適正な管理が必要であることがわかった.
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